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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

職人不足が景気回復のボトルネック!?――富田製作所①

中小企業トップインタビュー:富田製作所社長 富田英雄氏①

 

茨城県に本拠を構える富田製作所は、社員約180人の中小企業です。匠の技を必要とする厚板精密板金加工を極め、東京スカイツリーの基幹部を支える最も太い鋼管を製作するなど、オンリーワン技術を誇る、モノづくり企業の優等生です。

※茨城県古河市にある富田製作所古河工場

地方格差に加え、大企業と中小企業の間のさまざまな格差がいわれるなか、地方の中小企業はいかにして生き残っていくのか。中小企業の経営には、いま、何が求められるのか。技術、人づくり、理念、社員の幸せの実現など中小企業の経営問題を中心に、2016年から同社社長を務める富田英雄さんに話をうかがいました。

今日から5回に分けて掲載します。

片山「アベノミクスはもうダメか」といっていたら、少し景気が上向いているようですね。

富田 建設用の鉄の需要は、名古屋近辺と大阪近辺でそれぞれ、だいたい年間10万トン、東京近辺が220万トンといわれます。ところが、今年後半から来年にかけて、東京近辺のそれが500万トンから600万トンになるといわれています。


※富田製作所社長の富田英雄さん

片山 それはすごい。2.5倍ですね。オリンピック需要ですか。

富田 オリンピックもありますが、リニアモーターカーの新駅、八重洲、品川、渋谷など都内の再開発計画はたくさんあります。渋谷周辺などは、2027年が完成予定ですから、われわれ素材産業は、25年くらいまではなんとかなると思っています。ただ、鉄はつくれるんですが、問題は現場の職人が足りてないことなんですね。

片山 震災復興もあって、人件費の高騰が大変だと聞いています。

富田 鉄筋工、型枠工、溶接工などが、いずれも足りない。というのは、大きな構造物の溶接を手掛けられる、高い技術をもつ熟練溶接工は、全国に980人しかいないといわれています。どれだけ鉄の需要があっても、現場の職人の数がネックになって建設が進まない。熟練溶接工は、1日当たり3万円が相場の工賃が、今後10万円以上になっていくと聞きますよ。もっとも、どれだけお金を出したって、人が確保できないものは仕方がない、工事を進められないんですね。

片山 職人不足がボトルネックというわけですね。凄まじい世界になっていますね。私は昨年、フィリピンのセブ島で常石造船の造船所を見せてもらいましたが、3万トンから16万トンクラスの船を年間最大30隻もつくっているんですね。驚いたのは、女性が、溶接やクレーンの操縦を当たり前にこなしていることです。

富田 女性のほうが忍耐力がありますし、クレーンの操縦は力のいる作業ではありませんからねぇ。

片山 それにしても、いままさに経済発展の最中にある国の女性たちのチャレンジ精神というか、パワーというか、逞しさのようなものを強烈に感じましたね。

職人の不足が、大型の建設現場における大きな課題となっています。日本が今後、経済成長を続けていくためには、中小企業や、従来、男性の多かった「現場」の職場にも、女性の活躍を含めた“働き方改革”が求められているのは間違いありません。

また、職人の卵をいかに確保し、優秀な職人へと育て上げていくかが問われています。

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