宅配便の危機のなかで、新しい取り組みが次々と始まっています。
ヤマト運輸は昨日、今年9月にも、宅配便の基本運賃を5~20%引き上げる方針を決めました。大口顧客には、さらに大きな値上げを求める方針です。
物流の現場の混乱は、深刻な人手不足に加え、宅配便の急増が原因です。国内の宅配便などの取り扱い個数は、10年前に比べて30%近く増加し、2015年度は全国で37億4493万個。単純計算で一日当たり1026万個にのぼります。
しかし、「物流危機」と叫んだところで、宅配便の増加は止まりません。むしろ、今後ますます需要は拡大するでしょう。若年の単身世帯や共働き世帯にとって、必要なものをスマホから手軽に注文し、指定した時間に受け取れるネット通販は、じつに便利ですからね。
ユーザーが便利なサービスを求めれば、そこには、ビジネスのチャンスがあるんですね。
例えば、ビックカメラはネット通販の配達時間を延長した。これまで21時までだった配送時間を、午前0時までとしたのです。東京23区が対象で、午後3時までの注文を夜中の0時までに受け取ることができます。
帰宅が夜になる人でも、夜中に荷物を受け取れる。配送料は、購入額8000円以上で無料、それ未満だと1500円です。
それから、アマゾンジャパンが今月21日に開始した「Amazonフレッシュ」です。「Amazonプライム会員」向けで、都内の港区、千代田区、中央区、江東区、墨田区、江戸川区の一部を対象に、精肉、鮮魚、野菜、乳製品など1万7000点以上の食料品に加え、日用雑貨など計10万点以上の商品を、最短4時間で配達する。
しかも、午前8時から深夜0時まで2時間ごとに時間帯を指定して利用できます。
ただし、プライム会員の年会費3900円に加え、Amazonフレッシュ利用料月額500円、さらに購入額が6000円未満の場合は、一回につき500円の配送料がかかる。それでも、対価を払って使う人はいるでしょうね。
ちなみに、アマゾンは、プライム会員向けに、首都圏の一部に注文から最短1時間で商品を届ける「プライムナウ」というサービスも展開しています。
まだあります。セブン‐イレブン・ジャパンとセイノーホールディングスは、今月21日、宅配事業で提携を発表しました。セブンの加盟店にセイノー子会社の配達員が派遣され、顧客への商品の配達と「ご用聞き」をする。500円以上の購入で送料無料、しかも配達は1時間半ほどというスピードです。
これならば、お弁当でも手軽に注文できます。既存店の客数が減少しつつあるコンビニは、宅配で売り上げを伸ばしたい考えなんですね。
まだまだあります。配車アプリのウーバーが提供する「UberEATS(ウーバーイーツ)」です。国内では昨年9月に渋谷、恵比寿、赤坂、六本木、麻生などごく限られた範囲でサービスを開始しましたが、今月18日に、銀座や丸の内、日本橋、京橋などに配送エリアを拡大しました。
ウーバーイーツを簡単に説明すると、ユーザーとレストランと配達員をマッチングするサービスです。ユーザーはアプリを使って、ウーバーのパートナーのレストランに料理を注文。すると、レストランの近くにいる配達員が、ユーザーのところまで料理を配達してくれるんです。レストランは「出前」サービスで売上増が期待できます。
配送料は380円。ただし、4月末まで一部エリアは無料キャンペーン中です。
このように、配送サービスの拡大は、各方面でとどまるところを知りません。
需要増により値段が上がるのは、経済の原則です。こうしてみると、ヤマト運輸の値上げは、いわば当然の流れですよね。値上げが、配達員の賃金アップ、人手不足解消へと波及していけば理想です。
GPSやインターネットの普及を受け、物流網も新時代の物流網へ生まれ変わることが求められています。ただし、それには、まだまだ試行錯誤が続き、時間がかかるでしょうかね。
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