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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタがリハビリ支援ロボットをつくるワケ

トヨタは、なぜロボットをつくるのでしょうか。

トヨタは、リハビリテーション支援ロボット「ウェルウォークww-1000」のレンタルを、今秋スタートすると発表しました。脳卒中による下肢まひなどの患者の歩行練習を支援するためのロボットで、トヨタのロボットが実用化されるのは初めてです。

※トヨタの「ウェルウォークww-1000」

トヨタのロボットといえば、キロボミニを思い浮かべる人も少なくないんじゃないでしょうか。2004年にはトランペットやバイオリンを演奏するヒューマノイドロボットが発表されましたよね。TRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)におけるAI開発も含めて、トヨタは、さまざまな側面からロボット開発に取り組んでいます。

ただし、ヒューマノイドロボットは、家事支援などを目標に開発が進められていますが、実用化はハードルが高い。

一方で、産業用、医療用などのロボットとなれば出口が明確で実用化がしやすい。

実際、「ウェルウォーク」は医療機器の承認を得ています。ちなみに、トヨタには福祉車両の「ウェルキャブ」がありますが、これと「ウェルウォーク」は、「ウェル」がつくシリーズなんですね。

トヨタは、07年から、豊明市にある藤田保健衛生大学と共同で、「ウェルウォーク」の開発に取り組んできました。リハビリには、うまく補助しつつ、補助し過ぎないことが重要です。最小のアシスト量で、しかも回復に合わせてアシスト量を減らしつつ、たくさん歩く練習ができるほど、効率があがる。

その点、センサーやIT技術を使えば、アシスト量を数値で微調整したり、その数値を管理したり、同じアシスト量を反復したり、患者の力の入り具合を数値で把握できるなど、効率が上がる。さらに、自分の歩いている姿勢を前方の大型モニタに映し、前や横から見て確認しながら練習できるなど、臨床で生きる利便性がたくさんある。


※タッチパネルでシステムの一括操作が可能

実際、「ウェルウォーク」は、14年以降、全国の20以上の施設で実証実験が行われた結果、歩けるようになるのが、従来に比べて1.6倍ほど早くなっているといいます。

5月に受注を開始し、医療機関向けに、3年で100台をレンタルする予定です。初期費用は100万円、月額35万円です。

トヨタがロボットを開発する理由について、トヨタ未来創生センター常務役員の磯部利行さんは、次のように述べました。
「トヨタは、いいクルマづくりを通じていい町・いい社会づくりに貢献することを目ざしております。そのなかで、パートナーロボットは、さまざまな社会ニーズに対して人と共生しながら対応していくパートナーとして提案させていただいております」

なるほど、そういうことだったんですね。

いま、日本は人口減少、少子高齢化社会を迎え、生産年齢人口が減少。各業界で人手不足が深刻です。そのなかで、人手不足解消のために、サービスロボットが注目されている。その一つが、介護や医療用のロボットです。トヨタのほかにも、産業用ロボット大手の安川電機、川崎重工、ホンダ、パナソニックなどに加え、大学や研究機関も、歩行や医療、介護などをアシストするロボットを開発しています。

トヨタは、移乗ケアロボットや対話ロボット、生活支援ロボットなどを開発しており、「ウェルウォーク」を皮切りに、順次、実用化のフェーズに入るといいます。海外展開も視野に入れている。

医療や介護ロボットを含むサービスロボットの市場は、世界的に見てもまだ立ち上がったばかりです。ロボットメーカー、自動車メーカー、電機メーカー、ベンチャー、研究機関などが競争、また協調し、開発競争が繰り広げられています。

厳しい市場ではありますが、“課題先進国”日本は、優れた製品を生み出す土壌であるのは間違いありませんね。

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